InstagramやTwitterといったSNSが社会インフラとなるにつれて、企業もSNSの運用に乗り出しています。その一方、炎上を危惧して、なかなか積極的に運用を始められない人たちも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、1年間でSNSフォロワー数を1万人以上伸ばした、静岡県掛川市の株式会社キャタラーの広報担当である西倉さんに、運用のコツやBtoB企業がSNSを活用する理由を聞いてきました。
キャタラーのSNSフォロワーの比較表
2019年4月 | 2021年11月 | |
84 | 6,142 | |
289 | 2,699 | |
1,520 | 3,869 | |
合計 | 1,893 | 12,710 |
株式会社キャタラー
掛川市に拠点を置く、排出ガス浄化触媒をはじめ、燃料電池車用の電極触媒など、空気や水を浄化する新しい環境技術を開発するグローバルカンパニー。国内外に事業を展開しており、国内外11拠点を構える(営業所含む)。世界中の自動車メーカー・二輪車メーカーを取引先に持つ。従業員の男女比率は、女性が18.2%(2021年10月時点)と、女性が活躍している会社でもある。
キャタラーがSNSを始めた理由
–B to B企業でSNSを運用している企業はまだ多くありません。始めた理由を教えていただけますか?
理由は2つあります。
キャタラーは、SNSを始める前から、もともと情報発信に力を入れてきました。
しかし、ここ数年、明らかにホームページの新着情報の閲覧数が減ってきていました。
なぜかと考えると、企業の新着情報を見るために、ホームページにアクセスする機会が減ったからです。
私も含めてですが、SNSから情報を仕入れる機会が圧倒的に増えましたよね。
企業にとって、ホームページの存在は、情報の集約地。その入り口が、今多様化してきています。これが1つ目の理由です。
2つ目の理由は、企業活動の中で本業のこと以外を、ホームページにあげにくいという理由があります。
例えば近隣の高校が甲子園に行くことになった。その時に寄付をしたファクトを伝える媒体として、ホームページがふさわしいのか?ずっと違和感をいただいていました。活字で「寄付しました」ってなんかやらしいじゃないですか。
一方、SNSは、文字情報よりもビジュアルコミュニケーションが重要とされる性質があるため、地域貢献活動などの本業ではない企業活動にはマッチする媒体であると考えています。
–企業がSNSを始める上で、課題になることはありますか?
SNSは、スピードが大事ですが、私たちはホームページに何か投稿する際、社内決裁が必要でした。
しかし、SNSはスピード感が大切。投稿の際に、役員の承認をもらっていては、到底ついていけません。そこで、ホームページにしっかりとした情報を掲載しておくことを前提に、SNSは決裁権を私にしてもらいました。
これは、他の企業から相談を受けることも多く、会社の社内事情により、スピード感を出せないというのが本当に多いんです。決裁権をもらうというのは、SNS運用で大事なポイントだと思います。
–投稿の決裁権をもらっているのは、非常に大事なポイントですね!投稿はご自身で考えているのですか?
はい、企画から運用まで1人で担当しています。そのほうがスピード感を出すこともできます。何か受賞したら、そのファクトだけでもSNSにすぐにあげるようにしています。
一方、一人でやっているため、運用が非常に大変です。大企業であれば、1ヶ月分くらいのストックを貯めて運用しているところもあると思うのですが、私はまだそこまで手が回っていません。
–他の業務もある中、すごいですね・・。外部に依頼することはないのですか?
SNSは、写真映えする投稿で勝負しているのではなく、キャタラーのあらゆる企業活動に興味を持ってもらうことが目的です。社内のことを知っていない限り、コンテンツの切り口を企画できないと思うんです。外注されている企業も多いとは思うのですが、会社によっては社内でやるべきところもあるのかなと思います。
–社内で運用する上で、気をつけていることはありますか?
運用前に、ルールを決めています!ホームページにも掲載しているのですが、社内外向けにソーシャルポリシーを決めました。これは他の企業様にも、参考にしていただけるのではないでしょうか。
企画作りの基本
–企画を立てる上で、気をつけていることはありますか?
広報は、一方通行のコミュニケーションではいけないと思っています。
今の時代、聞き手(フォロワーの方々)が、主役にならないといけません。
キャタラーのSNSを見てもらうとわかると思うのですが、我々が伝えたい情報=フォロワーさんにとっても有益な情報になるようなコンテンツの設計を行なっています。
特にSNSは、エンゲージメントが重要と考えておりますので、情報がキャタラーからの一方通行にならないように心がけています。
SNSのメリットとして、この双方向のコミュニケーションが取れることがあります。ホームページは、コメントができませんよね。そこにモヤモヤしていました。もっとキャタラーを取りまく社会(ステークホルダー)とコミュニケーションをとっていきたいと考えると、SNSの積極的な活用は必然なのかもしれません。
広報というのは、双方があって初めて成り立つもの。発信ばかりしていては意味がなく、主役は聞き手であることを忘れないようにしています。
なぜB to B企業が広告費を使うようになったのか?
–採用で悩む地方の中小企業が増えています。SNSは解決の糸口になるでしょうか?
ホームページがない企業に就職するのは、ちょっと怖いと思いますよね。次は、SNSをやっていない企業は怖いとなる気がしています。SNSに触れてきたZ世代は、ググるからタグるに変わっています。ただ開設しているだけの企業と、フォロワーが多くて頑張っているアカウントでは印象が違うはず。
キャタラーはZ世代からの知名度を上げることを一つの目標にしています。県内4000人に実施したアンケート結果を見ると、10代の県民からの社名認知度は低いのですが、好感度はどの年代よりも高い。これは社名の認知だけで終わるのではなく、好意を持っていただけるようなコミュニケーションができている結果。
1年間で1万フォロワー増えていることを考えても、狙いはうまくいっているのかなと思います。
–確かに、若い世代に会社の存在を知ってもらうためにも、SNSは今や必要なツールです。
ここ10年連続で、なぜB to B 企業の広告宣伝費が右肩上がりしているのを知っていますか?最近、テレビコマーシャルで見る機会が増えたと思いませんか?
なぜB to B企業が、広告宣伝にお金を使っているのか?そこを考えていくと面白いと思います。企業によっては、採用に苦しんでいるかもしれない。それぞれ企業の課題があって、それらを克服するために広報をしていると思います。
ここで大事なのは、周りがSNSをやっているからやるのではなく、企業の課題を克服するためにSNSをやる。順番が大事だと思っています。
–3年ほど運用されていますが、失敗はありませんでしたか?
私たちも、たくさん失敗してきました。全然いいねが増えない時期があって。でも、まずは失敗すること。悩んだ期間があったからこそ、今はエンゲージメントが上がってきている。
どうやってエンゲージメントを上げるのか?とも相談を受けることもありますが、
エンゲージが上がる理由は、各社違うのかなと。現状把握と要因分析などPDCAを回すことが重要です。
–始めてよかったことは?
最近では、キャタラーがサポートしている掛川出身のアルペンスノーボーダー三木つばき選手のチラシ制作し3万枚印刷したことをポストしたところ、たくさんのコメントやDMが来たことですかね。
「私が配ります」とか「〇〇にお願いしときました」など、フォロワーさんのおかげで増刷になりました。
つばき選手の魅力が大きいのかなと思うのですが、SNSをやっていなければ感じられなかった社会とのつながりになったと思います。
インタビュー動画も公開!
今回のインタビューの様子を10分の動画にまとめました。合わせてご確認ください!