掛川市の専門部品メーカーが取組む次世代への挑戦

創業108年を迎えた、掛川市に本社を置く(株)藤田鐵工所

輸送用機器具の製造を行っており、マリンエンジン部品を中心に二輪エンジン部品・小型汎用部品の熱間鍛造・冷間鍛造・熱処理・切削・研磨・組立と一貫製造が可能な専門部品メーカーです。

そんな歴史ある企業が今、エンジン内燃機関部品は全く関係のない、チタンを使った(けん玉やお箸、ネクタイピンなど)の商品を開発していると聞き、取材に行ってきました。

なぜ、専門ぶひんメーカーの中小企業が新商品の開発に力を入れるのか?その新しい挑戦について、営業部営業課の藤田さんと技術部工機保全課の松浦さんにお話を伺ってきました!

鍛造品の製造をしている創業108年の会社

–会社について教えてください。

私たちは、創業108年を迎えた鍛造加工から組立までの一貫製造をしている専門部品メーカーです。元々は掛川というだけあり、製茶機械や工作機械を作っていましたが、今はエンジン内燃機関部品が中心です。

二輪(バイク)や船外機、農機具のエンジン周りの部品が多く、芝刈り機やチェーンソーのエンジン周りの部品も手がけています。

–そんな会社がなぜ、チタンの製品を作り始めたのでしょうか?

企業理念で「NEXT100」を掲げています。

カーボンニュートラル社会実現の為にもエンジン内燃機関部品だけでなく次世代に繋がる商品開発が必要だと考えたからです。 また、弊社はチタンの熱間鍛造を行っていますが、その時に出る端材を廃棄しなければなりません。

チタンは材料費も高価ですのでもったいないですし、破棄すること自体がエコではありません。

そこで端材を有効活用できないかと、プロジェクトチームを結成しました。最初は遊び心から日本の伝統的なおもちゃを作るところから始まって、今はアウトドア系・アパレル系の製品へ展開しています。

もう一つの理由は、SDGsの推進です。元々、端材を再利用することがエコなのですが、チタンは軽い・強い・錆びにくいという3大長所を持ち、耐久性が高いため、半永久的に使えます。

そのため、廃却する必要がなく、リサイクルもしやすいです。割り箸は国内だけでも年間約250億膳廃棄されていると言われていますが、チタン箸を普及させることでCO2削減にも貢献できるということです。

–最近はApple Watchにチタンが使われたり、色々と注目を集めています。理由はなんでしょうか?

コストは高いのですが、チタンは人工関節やインプラント等の医療機器にも利用されている金属で、世界的に需要が広がってるのが現状です。

金属アレルギー反応が出にくく、有害性がないという魅力的な特徴もあるので、重要視されている材質の一つです。その分、加工が簡単ではないので経験とノウハウが必要になります。

–どのようにチームは形成されているのでしょうか?

今現在は専門の部署があるわけではありません。

まだまだ新しい試みですので、モチベーションが高く、自社ブランドを立ち上げたい!という気持ちが強い6人が集まって、月に一回、通常の業務の傍ら商品開発を目指しています。

–B to C向けの製品への取り組みは、プロジェクトの進め方に苦労したのではないでしょうか?

最初は手探り状態で、どんなものが作れるのかと、けん玉やマスなどを作っていました。

しかし、コロナ禍になりアウトドアのトレンドが強くなっているということを耳にし、市場機会を見つけました。その際、ちょうど弊社グループの「大和鍛工(株)」が、菊川市の「アイアンクラフト様」とコラボをしてフライパンを作っていたことも大きな後押しとなりました。

まずは、「アイアンクラフト様」にアウトドア用品のことを教えていただきながら、一緒に製品作りをしようとなったのです。

–それで完成したのがお箸ということですね。

そうですね。最初はフライパンで使うチタンの菜箸として考えていたのですが、アドバイスを基にどんどん小さくしていきました。アウトドアでは持ち運びやすが大事ということも知ることができました。

最終的に完成したのが、こちらのお箸です。純チタンでここまでコンパクト化を実現することができました。

–すごく小さいですね。ここまで小型化するのは大変だったのでは。

簡単に小さくできたわけではなく、何度も試作を繰り返して今の形に辿り着きました。もちろん、苦労もたくさんあります。ショットブラスト(小さな鉄の弾をお箸の表面に衝突させることで、サビ防止や外観を美しくする効果がある)加工をした後に洗浄したところ、錆びないはずのチタンが錆びてしまうことがありました。

結局は、目に見えない鉄の弾の小さなクズがチタンに付着して、もらいサビという現象が起きていたのです。初めての経験だったので、みんなで頭を抱えましたが、それが逆に大きな財産にもなりました。

経験を積んでものづくりを学び、更にお客様のニーズに応えれるチタン製品を開発していきたいです。

今はどこで購入できますか?

ふるさと納税で購入できます。『DORAGONFLY ~ 純チタン製 お箸 セット~』という名前で販売しています。まだ販売を始めたばかりなのですが、3セット受注いただくことができました。作ったものが売れるという至極あたりまえのことですが、実際に購入してもらえると非常に嬉しかったです。

今後の取り組みについて

–今後はどのような取り組みを考えていますか?

SNSを利用したマーケットの開拓をしていきたいと思い、オンラインショップBASE(PAYID)の開設も進めているところです。また、新しい製品の開発も初めていこうと思っています。弊社の社長がよく言うのは、「発想の転換」です。市場でヒットしている商品と戦うのは難しい。どこに付加価値を置くのか。材質をチタンにしたり、形状を変えたりしながら、付加価値の大きい新商品を作りたいです。

–新しい人材も必要になりそうですね。

ある程度販売数を増やすことができたら、自社製品開発に専念した部署を立ち上げれる様にアピールしていきたいですね。またメンバーもこのまま同じと言うわけにはいかないと思うので、社内では技術伝承を行い、新たな人財も募集し、一緒に活動しながら引き継いでいける体制も整えなければなりません。

–日常業務と並行しながらやるのは大変そうですね。どんな人に来てもらいたいですか?

広いヴィジョンを持ち、周りへの配慮が出来る人財に来ていただきたいです。会社は組織で力を合わせて成長していくことが重要ですので、周りとのチームワークが欠かせません。まさにワンチームですね。
そして何より

・藤田ブランドのものづくりに関わりたい!

・仲間と楽しくものづくりをしていきたい!

・サスティナブルな商品を発案し、一緒に世の中を変えていきたい!

・自分のアイデアをカタチにし、商品化したい!

等、前向きでモチベーションの高い方を募集しています!この記事を見て少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。