掛川には、お茶だけではない、守っていかなければいけない地元の農作物がたくさんあります。掛川市五明で代々続く「松浦農園 KP Farm」では今、若い世代のパワーやアイデアを取り入れ、新たな取り組みを始めています。
「松浦農園 KP Farm」の新事業、加工品の製造・販売について三代目である松浦さんに取材をさせて頂きました。
Contents
「松浦農園 KP Farm」ってどんなところ?
松浦農園は、代々農家として当初はお茶と水稲を栽培していました。
お爺様の代からいちご栽培を始めて早40年、現在は、お父様、お孫さんと三世代で農園を運営しています。
いちごの高設栽培やお茶の乗用摘採などの先進技術を導入し、農園の経営規模拡大に試行錯誤しながら、日々新しい取り組みに挑戦しています。昨今の茶業の低迷により、近年では、茶業からレモン栽培への転換を図っているそうです。
「松浦農園 KP Farm」のこだわり
『持続可能な農業を目指し、減農薬天敵農法を実践しています』
「松浦農園 KP Farm」では、害虫を捕食する天敵を放飼いにし、害虫を駆除。また、菌根菌を利用して病気の発生を予防するなど、持続可能な農業を目指した農法を用いています。
現在、いちご栽培では 天敵農法、レモン栽培は減農薬に取り組んでいるそう。
このような農法の導入は、農薬散布を減らせるため安全な作物が生産できます。消費者としても安心して購入できるのはもちろん、減農薬により販路が広がり、生産者にとってもメリットがあると言われています。
安心安全な農法の導入は、掛川の農業の未来を支えてくれる大切な取り組みですね。
生産している品種は?
いちごでは紅ほっぺの栽培を行うほか、レモンは5種類(リスボン・アレンユーレカ、マイヤー、璃の香、レモネード)を栽培し、この土地に合った品種を選定中。
レモンといっても、こんなにも種類があることに驚いている人も多いのではないでしょうか。耐寒性や糖度、酸味など、同じレモンと言えど、特徴はそれぞれに大きく違います。
掛川の土地に合った、地元産レモンの完成が楽しみでなりませんね。
2021年4月に加工場をOPEN!!
加工場を作ろうと思ったきっかけや経緯をお伺いしました。
『今まで規格外で捨てていたものを無駄なく使用して、消費者の皆様に届けたい』
おいしいのに、変形や完熟、傷などで出荷できないいちごをお客様に届け、食品ロスゼロを目指していきたいという思いから加工場を作りました。
独自産業化は前々から考えていましたが、後継者ができたことから加工場の計画を実行しました。
日本の農業界においての大きな課題でもある規格外の問題。味は変わらないのに規格外というだけで食品ロスへと繋がってしまうのは勿体ないですね。
そんな「松浦農園 KP Farm」が誇る絶品いちごが、2021年4月より、いちごシェイクや完熟ドライいちご、完熟いちごジャムとして加工・販売されるようになりました。
営業時期や営業時間
営業日:いちご収穫期(1月~6月)と夏(7~8月)土日限定。
営業時間:10時~16時です。
収穫期は完熟いちごのほか、完熟いちごジャム、ドライいちごなどの加工品の購入が可能。夏は土日限定でいちごシェイクを販売しています。
※加工品は在庫がなくなるまでの限定数なので、気になる方はシーズン中にHPやInstgramにて確認してみてくださいね。
商品ラインナップ
- 完熟いちご
- 完熟いちごジャム
- 完熟ドライいちご
- 加工用いちご
- いちごシェイク
2021年はいちごシェイクのみでしたが、今後ドリンク商品のラインナップが増える構想もあるそう。2022年、どんなドリンクが登場するのか楽しみですね。
品種を選定中のレモンは、生レモンとして販売される可能性もあるそうなので、こちらも引き続き注目していきたいですね。
親子三世代で営む農園のこれから
現在、「松浦農園 KP Farm」では、お父様が全体の舵取りを行い、お爺様を筆頭に、お母さまお孫さん達がいちご栽培を行う三世代運営をしています。
三世代で力を合わせているからこそのメリットも大きく、レモン栽培や加工場のオープンなど、新たな取り組みが実現しています。
若い世代向けにオリジナルフォトスポットを設けたり、小さなお子さまでも安心して食べられるおやつとしてドライいちごを作るなど、さまざまな角度から消費者への想いを形にしています。
「今後の課題として、お爺様の労働負担を減らして、仕事の分担を見直したい」と話す、頼もしいお孫さんの言葉に、未来への希望を感じずにはいられません。
今後の展望
『現状、この地域でのレモン栽培は確立されていませんが、仲間を増やして掛川をレモンの産地にする「掛川レモン産地化プロジェクト」を計画中です』
掛川をレモンの産地へ!!新たなブランディングにも挑戦中!
その昔、刀を捨てた武士たちが、原野を開墾しお茶栽培を始めたから今の掛川のお茶がある。
「掛川レモン産地化プロジェクト」もまたいつの日か、そんな風に未来の掛川を支える大きな産業になっているかもしれませんね。
SDGsの取り組み
きっかけは「食品ロスをなくしたい」という思い。
『現在はいちごの加工品のみですが、レモンの商品開発や、この地域の農家さんと協力し、他の作物も使って地域全体で食品ロスを減らしていけるよう努めていきたいと考えています。』
自家農園だけでなく、掛川の地域農業全体の未来を見据え、食品ロスゼロへの取り組みを進めている「松浦農園 KP Farm」。SDGsを実践する農園として今後も期待が高まります。
『出荷する作物には、形や大きさ、熟度などいろいろと規格がある。どうしても一定数出荷できないものが出てきてしまいます。』
『収穫した作物を無駄なく届けられるよう、加工場を作り、リユースできる素材を使ったり、生分解性のストローを使ったり、SDGsにある「つくる責任」を考えて商品開発に取り組んでいます。』
2021年4月より始まった加工に関しては、まだまだ手探り。現在は、加工技術の平準化、生産量安定化、新たな商品開発などに向けて試行錯誤中とのこと。
食品ロスゼロだけではなく、ジャム瓶のリユース、さとうきびストロー、マイバッグ推奨など、地球にやさしい取り組みを確実に一歩ずつ。小さな取り組みもみんなでやれば大きな力になります。
「松浦農園 KP Farm」の加工品を購入する際は、マイバック持参、ジャム瓶のリユースなど、私たち消費者に出来ることを意識し、一緒に持続可能な農業を応援していきたいですね。
掛川の農業への想い
『農家の高齢化が進んで、荒廃農地が増えてきています。もっと若者が参入しやすい環境ができていけばいいなと思います。』
家族三世代でやっている特性を生かして、昔ながらの方法と新しい発想を組み合わせ、安心、安全でおいしいのはもちろん、お客様に楽しんでいただけるような商品を作っていきたい。』
掛川の農業・茶業において、今最も深刻な荒廃農地問題。「松浦農園 KP Farm」のように、とても頼もしい後継者がいる農園は実はとても少ない。
若者の農業への参入は、今後の大きな課題でもあります。
からだにも環境にも優しい、持続可能な農業を目指す「松浦農園 KP Farm」は、お客様に届いた後のことまで考えて商品開発をしています。
三世代の知恵が集まり、昔から大切にされてきたことと、新しい挑戦や発想、そしてSDGsが掛け合わさったとき、掛川の農業の未来は明るく開けてくるように感じます。