創業120年!葛湯の老舗「丁葛製造本舗 桂花園」の魅力を取材してきました

掛川の名産品である「葛」。

掛川市では、2018年に「葛利活用委員会」を設け、伝統産業の「葛布(かっぷ)」振興を目的としてさまざまな取り組みを開始しています。

今日は、そんな葛産業の中でも、市民に親しまれ続けている銘菓「丁葛」を製造している「桂花園」様にお邪魔し、笑顔が素敵な女将、中村さんにお店の歴史や葛について教えていただきました。

「丁葛製造本舗 桂花園」とは?

創業120年、掛川市仁藤町で明治より続く伝統を守り続けている「丁葛製造本舗 桂花園」。

お店の看板商品であり、登録商標にもなっている「丁葛」は、全国菓子大博覧会で「内閣総理大臣賞」受賞、皇室より「無鑑査賞」を受賞するなど、その人気は掛川市内にとどまらず、全国各地の百貨店などでも販売され、多くの方に愛され続けています。

※無鑑査賞とは…審査する必要がないと認められた優良商品に贈られる賞

「桂花園」の屋号と「丁葛」の由来

「桂花園」の屋号は、先祖からきており、掛川藩の国文学者だった「桂花園葛嶺(中村葛嶺)」から桂花園をもらっているんだそう。

お店の登録商標である「丁葛」は、葛を固めて軒先に吊るしていた見た目がお豆腐に見えるということで、一丁・二丁と数えていたことに由来し、「丁葛」として名前を頂いたんだそう。

「丁葛」の誕生から現在までのあゆみ

江戸時代、東海道「掛川宿」の繁栄とともに盛んとなった「葛布(かっぷ)」産業。それと時を同じくして栄えるようになったのが「葛湯」です。

土の上に出ている”つる”が布(繊維)になり、土の中の”根っこ”が葛粉になります。当時は、葛粉を四角く固めて、直接藁ひもでしばり、軒先につるしておく家庭が多く、地元の人にとっては薬用・漢方・保存食として大切にされていました。

桂花園初代店主は、葛を病人食以外に、”お菓子”としても召し上がっていただけるようにと商品を製造したのが「丁葛」の始まりだそう。

当時は、固まりの葛粉を一度水でサラサラに溶いて、火にかけて練る手間がありましたが、初代店主は、手間なく、簡単に葛を楽しめるよう、熱湯さえあれば作れるようにと製造をしたものが現在の「丁葛」です。

「丁葛」は全て職人さんの手作り。機械化はあえてせず、包装までひとつひとつ丁寧に手作業で行っています。

はじめは、くずゆ(白)・くず茶(緑)・葛汁粉(赤)3色で始め、「くずゆ(白)」は古くからの伝統を守り続けた定番の葛湯、「くず茶(緑)」は、お茶処掛川ならではの和のテイスト、「葛汁粉(赤)」は、晒し餡を入れた葛湯で、お汁粉のような味わいです。

現在では、13種類の葛湯とともに、オリジナルの和菓子も人気を集めています。

葛湯の健康効果・効能

葛の健康効果について中村さんにお伺いすると、「葛は繊維の固まりなので、腸内環境を整えるのに良いと言われ、おやつ代わりにおなかに入れるのもおすすめ」と話します。

昨今、”腸活”の重要性に注目が集まっていますが、掛川では、古くより葛湯で腸活を行っていたと思うと、昔の方々の生活の知恵と工夫には驚いてしまいます。

中村さん:「葛湯は飲むイメージが強いですが、桂花園では、食べる葛湯も販売しています。根強い人気のある固形の「丁葛粉」は、くずもち・くずきり・葛菓子・ゴマ豆腐・餡掛け料理など片栗粉代わりに料理に使用する方もいるんです。」

中村さん:「健康シリーズのイメージで作られた「丁葛」には、春ウコンや高麗人参、冬虫夏草やキダチアロエの粉末などをブレンドした葛湯があって、健康を気遣う人に良く飲まれています。それぞれの持っている効能にプラスして葛の効能が得られるとあって、病中病後や食欲不振などの時におすすめです。」

葛は体調が良くない時に飲むといった方が多いですが、腸活のために、日々取り入れるのも良いですね!友人やご近所への手土産にも喜ばれそうです。

桂花園のおすすめ和菓子

桂花園では、「丁葛」以外にも、職人さんたちが一つ一つ心を込めて手作りするオリジナルの和菓子も人気なんだそう。

「昔かすていら」は今は珍しい一本焼のカステラ。近年は、大きく焼いてカットするカステラが多いそうですが、「丁葛」のカステラは、120年、姿形の変わらない1本焼きのカステラです。

中村さん:「1本焼きは時間もかかるし、数もたくさんできないんですが、昔ながらの素朴なカステラを作り続けています。」

120年変わらず愛されているカステラ、これは食べないわけにいかない。帰宅後早速頂きました。ほんのりとした甘みが優しく、子ども達にも大好評。数時間で売り切れてしまいました。

「丁葛」の人気和菓子と言えばもう一つ。ゆずっこ最中」は、毎日皮から手作りされるこだわりの最中です。ほんのり香るゆずと自家製あんの相性が良く、保存料・添加物・香料などは一切不使用。最中の皮は薄口で焼いているのでもたつかずに軽くて食べやすいのが人気の秘密。

中村さん:「朝お餅を仕込み、棒状にし、細かく切って型に入れ、専用の焼き器で焼き上げる。もちろん中の餡も全て手作りです。紅白カラーの最中は、お歳暮や卒業入学、結婚式など、節目節目で利用して頂いています。」

中村さん:「定期商品のほか、春は桜餅や柏餅、これからの時期は葛桜(こしあんを葛でくるんだお菓子)や栗蒸し羊羹など、季節のお菓子も人気です。」

筆者がお邪魔した午後には、季節商品の柏餅はすでに売り切れていました。

中村さん:「それでもこの時期は割と落ち着いているほう。冬は特に、「丁葛」も「焼き菓子」もたくさんのお客様に買っていただいています。軒先からお店の周辺までぐるりと行列に並んでいただくことも多いんです。」

「丁葛」のおすすすめの飲み方・食べ方

葛湯初心者の筆者は、おすすめの飲み方・食べ方をお伺いしました。

中村さん:「普段はおもてなしとして店頭でお出ししているんです。冬は温かい葛湯、夏は冷たくしたり、氷で固めたりしてお出ししたりもしています。」

飲み方も説明してくれるそうですが、現在は感染症対策で店頭での試飲は自粛中とのことです。

中村さん:「冬によく飲まれる葛湯ですが、実は一年間いろいろなバリエーションで楽しめるんです。熱湯からのイメージも強いですが、「くずゆ(白)」や「ココア葛湯」などは、牛乳や豆乳から作るのもおすすめです。お客様から教えていただくことも多いんですよ。昨年のTV取材の時には、スタッフの方が、「しょうが葛湯」を紅茶で作ると美味しかったよ教えてくれて、試してみたらとてもおいしくて。」

お客様とのコミュニケーションを大切にする中村さんの笑顔に、お客様とともに進化している商品なのだな感じた瞬間でした。

中村さん:「夏場は冷たくした葛の上に、茹で小豆・きなこと黒蜜・カットフルーツなんかを乗せて食べたり、「ココア葛湯」や「抹茶葛湯」にフレッシュをかけるとか、本当にさまざまなバリエーションの食べ方で楽しめます。」

冬のイメージが強い葛湯ですが、夏の葛湯アレンジもとても美味しそうですね!

葛のこれからの課題と桂花園の想い

掛川の名産品を製造・販売しているからこそ感じる、葛の課題や想いをお伺いしました。

中村さん:「葛を採るのはとても大変な作業なんです。今は採る人が減り、掛川産の葛は減ってしまい、市で葛の生産への取り組みも行われ始めたようです。ですが、葛粉自体が日本だけでは取り切れず、海外から輸入し日本国内で精製しているのが現状。葛の生産の問題が今後の課題ですね。どうなるか分かりませんが、市の今後の取り組みにも期待したいです。」

全国各地の百貨店などにも出荷されている、掛川を代表する「桂花園」の葛湯「丁葛」。葛の生産農家さんの減少は今後も目を背けることのできない大きな課題となりそうです。これからの掛川を支える若者たちにも、ぜひ葛の良さ・葛の現状・葛の課題と向き合い、掛川の名産品を守っていってもらいたいなと感じます。

中村さん:「いつも明るく元気に声をかけ、気持ちよくお買い物をし、気持ちよくお帰り頂くことを心がけています。お客様から声をかけて頂いたりすることで私たちも元気を貰っています。山あり谷あり乗り越えてやっていく、続けることって時にとても大変。飽きずに商いを続ける。これが何より大切ですね」

そう笑顔で話す中村さんの言葉には、120年の重みが詰まっており、とても大切なことを教えて貰ったように感じます。進む道に迷ったら、中村さんに会いに行って、美味しい葛湯で心を落ち着かせたい。そんな温かい場所でした。