特集「掛川で働く」

柴田牧場のルーツへ迫る。国の規制を乗り越え、牛乳を作り始めるまでの軌跡を聞いた

掛川の暮らしを発信するWebメディア「掛川暮らしのマガジン」。特集「掛川で働く」では、掛川で働く人たちにフォーカスしながら掛川で働く魅力を探ります。

今回は、柴田牧場の柴田代表にお話を伺いました。

柴田牧場|しばちゃんランチマーケット

掛川市にある「しばちゃんち」でおなじみの柴田牧場。安心安全をモットーに、ジャージー牛のおいしいミルクを生産している。運営しているしばちゃんランチマーケットは、山あいの河畔に佇む小さなランチ(牧場)カフェで、ランチやアイスクリームが人気。

規制を乗り越え、全国で初めて酪農家が牛乳の販売を行う

-いつ頃から将来のことを考えていましたか?

実家が農家だったので、農業は身近な職業でした。中学のころから、農業に関係する仕事をしたいというのは心の中にありましたね。高校受験の時、集団面接で将来のやりたい仕事について聞かれたのですが、当時、景気悪くて。8人中7人が公務員と言う中、私だけ農業に関する仕事をしたいと答えたんです。

-一人だけ意思が明確だったんですね!(笑)しばちゃんといえば酪農なのですが、当時は農業志望だったんですね。

そうですね。東京の大学を卒業してから掛川に戻ってきましたが、その時は酪農をやりたかったわけではありません。自分がやりたい農業があったんです。学生時代に勉強する間に漠然と思い描いていた、美味しくて安全なものを地元の消費者に直接買ってもらうスタイルをやりたいと。お米とか野菜とかを想像していましたね。

-意外です。

当時、お米は自分で売ってはいけないという時代でした。全てJAに卸すという。自分で売る農家は少なかったし、私が酪農以外を目指した理由は、牛乳を自分で絞って売ることができなかったからです。農協に出荷するしかなかった。自分で瓶詰めして、牛乳工場を作ることを農水省が規制していた時代だったんです。結局自分で売れない。自分が目指すものとは違うじゃないですか。だから、酪農ではなく、農業に目を向けていました。

-そんな時代があったなんて知りませんでした。そこからなぜ今のスタイルにできたのでしょうか?

お米や野菜を売ったりするのを23歳ごろからはじめ、24歳の頃から自分で掛川市内に宅配することを始めました。30歳くらいから、牛乳やろうかなと。当時は牛乳工場の建設は規制されていましたが、県に相談していました。ダメだと言われていたけど、おもしろがって農林事務所の方々が付き合ってくれて。

規制緩和が進んでいる時期だったので、お米は平成6年ごろから自分で売れるようになってきました。次第に牛乳も規制緩和されるかもという雰囲気が出始め、農水省に提案を出した。そしたら、OKが出たんですよ!それが平成8年。元々、規制を無視して販売しているところはありましたが、許可を取って始めたのは柴田牧場が初ですね。

ジャージー牛乳は市販の牛乳と何が違う?

-柴田牧場といえば、ジャージー牛ですよね。

うちの父親が飼っていたのは、ホルスタインと呼ばれる牛でした。学生の頃から、牛を飼うならジャージー牛と考えていたので、平成8年に牛乳の販売を始める時には全てジャージー牛に切り替えていました。

-世の中の99%がホルスタインと言われている中、なぜ、ジャージー牛にこだわるのでしょうか?

ホルスタインは一頭からたくさんの牛乳が取れる。酪農も経済活動ですから、利益を考えないといけない。そうなると、白黒のホルスタインのほうがいいわけです。それでも柴田牧場は、全てジャージー牛に切り替えました。小さくて可愛いじゃないですか。それに、ジャージー牛のミルクは、ホルスタインに比べて3割ほど濃厚なんですよ。アイスクリームやソフトクリームに加工する時、余分なものを入れなくても十分美味しいものができる。ホルスタインの牛乳を使うと生クリームを入れるので、牛乳の本来の味からは遠ざかっていく。ジャージーなら、混ぜ物をしなくてもさまざまな加工品が作れるんです。

-柴田牧場さんの牛乳は確かに市販品とは全く違うなと思います。

柴田牧場のこだわりは、美味しい安全なものをお届けすることにつきます。この考えは、昔から一切変わりありません。65°で30分置いておく低温殺菌を大事にしてます。これも、美味しくて安全なものを提供するための取り組みの1つです。スーパーで売っているような牛乳は高温殺菌で、飲むと「焦げている」と感じますね。低温殺菌だからこそ、生乳に近い牛乳本来の味を実現できています。

酪農を仕事にすることについて

-今は何名の方が働かれているんですか?

牛舎の農場部門と、 牛乳やアイスの販売を行っている加工販売と分かれているのですが、牛舎のスタッフは3人いて私も入れると4人です。みんな20代の女性です。男性がいないんですよ。

-え、力仕事のイメージがあって、男性が多いのかと思いました。

不思議と、女性のほうが長続きする傾向がありますね。もちろん、採用は男女隔てなく行っていて、県外出身の方からもたくさんの応募をいただいています。

-意外な結果で驚きです。あと、朝早いイメージがありますが、勤務スケジュールはどんな感じでしょうか?

私は朝4時から仕事をしていますが、 スタッフの子たちは朝5時から昼10時頃まで。 朝の仕事が終わるとみんな家に帰って、16時になるとまた戻ってきて仕事をして帰ります。

-お昼休憩が長いですね!

その間は、牛たちが仕事をしてくれているんです。寝転がっているように見えますが、ご飯を反芻して、消化しています。この時間があるからこそ、美味しい牛乳をいただけているんです。

-酪農という仕事をしていて、どんなときにやりがいを感じますか?

汚れたりする仕事ではあるのですが、動物を相手にしている仕事ならではのやりがいがありますね。可愛がってあげれば、その分だけ反応してくれます。そういうのが嬉しいし、楽しいですね。

あとは、私は毎週木曜日と火曜日は、宅配に出ているのもやりがいです。

-え、ご自身で回られているのですか?

一軒一軒回っていますよ。お客様と顔を合わせて、手渡しして。待っててくれるお客様もいて、嬉しいですね。

-最後に、長らく掛川に住んでいて、掛川の魅力はどんなところに感じますか?

掛川は野菜もお肉を生産している農家さんがあって、キウイやイチゴ、メロンなどのフルーツもあります。ファーマーズマーケットに行けば、生活に必要なものは全て揃うというの魅力の1つだと思います。

また、原野谷川という川が山の上にありまして。そこに集落があり、清流でお米を作っています。これがすごいんですよ。全国では集落が消えている中で、なぜかそこは人が残っている。前市長の榛村さんがいうには、田んぼがあるからだというんです。こうした里山の風景が残っているのも、掛川の魅力でもあると思いますね。

取材を終えて

酪農という仕事は、非常に奥が深い。生き物と向き合うからこそ、愛情がなければできない仕事だ。そんな仕事を、30年以上続けてきた柴田さんは、常に「美味しくて安全なもの」を提供することに力を尽くしてきた。たとえ、規制が阻もうとも、周りの力を借りて進んできた。本気で生きる人には、運は味方するものだ。そう思った。

そんなチャレンジャーであり愛情深い柴田さんの牛乳は、一体どんな味がするのだろうか。きっと僕たちの記憶に残るものであるに違いない。今日も、柴田牧場が運営するしばちゃんランチマーケットには、子ども連れが集まる。おいしいだけでは、人は集まらない。きっとここには、現代の人たちが求めている安心があるのだろう。

しばちゃん牧場のランチカレー
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しまけん
掛川在住の編集ライター。掛川でバリバリ取材してます!掛川暮らしのマガジンを運営しています。
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