前回の珈琲を売るお茶屋さんを訪ねて1では、「掛川一風堂」の珈琲のあゆみをメインテーマにご紹介しました。
今回は、「掛川一風堂」がどのようにして、お茶と珈琲と向き合ってきたのか、そして、掛川のお茶業界の希望についても語って頂きました。
前回の記事から読む⇒珈琲を売るお茶屋さんを訪ねて1
二刀流を続けてきた掛川一風堂が見る未来への希望
本来、お茶や珈琲といった嗜好品は、経済の影響を受けにくいと言われているそう。しかし、昨今のお茶の産出量の減少は、業界内だけでなく、掛川市民からも高く注目されている。
そんな現状を、掛川一風堂では、どう感じているのでしょうか。
コロナの影響とか一時的なものではなく、時代背景として急須を持っていない人が増えてきていることが実は大きい。その理由は一つではないが、これだけペットボトル産業が伸びているなら、下地は整っているのでは?
既存のやり方ではもう難しい。これからは、お茶を知らない人がもっと入って、新しい風を吹かせていくべき。
長いお茶の歴史の中で、いい時代もあった。時代は昭和、平成、そして令和へ。茶業界は今大きな岐路に立たされている。今の茶業界を支える人達が、時代に順応した変化に対応していくことも求められているのかもしれない。
スーパーのお茶単価が下がって、お茶をギフトに、というイメージがネガティブになっている。引き物や無料配布なども、お茶をギフトとして送りにくくなっている要因。
これからは、お茶に興味を持ってもらえるような見せ方が必要。無料配布にしても、子どもの自由研究で使えるとか、体験できるものとか工夫があると良い。お茶は貰えるものというイメージを払拭したい。
お茶はお茶屋さんだけが売るではなく、珈琲屋さんにお茶を売ってもらうとかもいい。火入れ設備などは業界で作っているところがあるし、あと必要なのは、お茶に詳しい専門家。でもそれだけじゃ足りない。「掛川一風堂」には四半世紀二刀流をやってきた実績がある。
「掛川一風堂」でいえば、ようやくギフト系も開けてきた。別角度から売る商品の反応はガラッと変わってきている。「珈琲とお茶のセット」、これは、お茶屋が珈琲を作っているからこその商品。
カタログギフトってどれを選んでよいか分からないもの。いいとこ取りして買えるものは何か?と作ったものが期待以上の反応だった。
ギフトの価格設定はとても悩んだ。客層・ギフトを送る側・受け取る側・いろんな角度から考えて価格を決めた。商品は何十種類も作らなくていい。じっくり時間をかけて一つ作ればいい。それをお茶と珈琲の両方から客観的にみて価格を決めていく。
商品を作ることは誰でもできる。そこはスタートであってゴールではない。
昔はなんで注文来ないんだって文句をいって高をくくっていた。そういうのはやっぱり商品に出てしまう。
「掛川一風堂」に声をかけたら面白いものを作ってくれるんじゃないかなと思ってもらえるように、注文が1件、2件であっても真摯に大切にしていくことが大事。
- もしも、掛川が誇る深蒸し茶がなくなったら?
- 地場産業がなくなったら?
- 目の前にあった美しい茶畑が消えてしまったら?
私たち市民も、地場として当たり前にあるお茶の価値を、再認識する時なのかもしれません。
不安が多いお茶業界の現状、しかし荒川さんの言葉からは、二刀流を続けてきて得た新しい販路に希望を感じずにはいられない。
今後の茶業界に必要なこと
茶業界が憂う同族経営の困難、後継ぎ問題、産出量の減少、販路の開拓。これからの茶業界に必要なことをずばり聞いてみるとこんな答えが返ってきました。
農家さんが、本来なら一番強いポジションにあるべき。
問屋が何を言っても作ってくれる人がいなければ始まらない。一番の理想は、生産農家さんが一番上位にいること。流通に関わる人達がそれをわきまえていること。
生産農家さんにとってメリットの多い形を、新しいビジネスモデルとして作っていくことが求められているのでは?
荒川さんが語る生産農家さんが上位に来るために今、出来ることとは。
- お茶の価値を知らない人にお茶を知ってもらう
- お茶を扱ったことない人がお茶を扱う
珈琲専門店では、いろんな種類の銘柄から好きな珈琲を選べる。しかしお茶は、産地や生産者ごとに販売されている。
珈琲という視点を通してお茶を見てみると、私たち消費者にとって、専門店でいろんな種類のお茶を選ぶという楽しみ方がってもいいのかもしれない。
全国のお茶商品の中から自分の好きなものを選べるようにしたら良い。
珈琲のイメージでいうと、ブラジルブルボンとイエローハニー。
お茶なら、例えば、深蒸し掛川茶と京都宇治茶みたいな感じ。
珈琲は、特にお店の人の価値観が味を作っている。安いコーヒーでも山の上とか、飲む場所によってさらに美味しいと思える。最高の一杯のために山を登るとか。そういう時間のために買いに来てくれる人がいる。
お茶で同じようにやったとしても、お客さんとの距離感が違う。
来店して、相談して、その人に合った商品を提供していくという信頼関係が、築きにくい。それがお茶の専門店に買いに行くハードルの高さであって、珈琲との違い。
荒川さんがいう「お茶を扱ったことない人がお茶を扱う」とは、まさにこういうことなのだろうと思う。違った視点でお茶を見ることで見えてくる希望がある。
消費者心理や商品価格など、いろんな現場を見て、自分もたくさん買ってみる。こういうコンセプトでこういう人に飲んでもらいたい、そこからマーケティングする。SNSの個人の意見もすごくありがたい。
お茶もそう考えると変わると思う。コンセプトは他で勉強してもいい。そこから自分のオリジナルを作っていく。
不安が原動力となって作ったものはネガティブにしか行かない。シンプルにこれっていう物を見つけて、人間性やお店にマッチしたやり方を見つけていくことが大事ではないかな。楽しいと思うことをやる。思いが強い方が相手に伝わる。
掛川一風堂が大切にしていること
「掛川一風堂」の営業努力は、凄い。とにかく地道で根気強い。
商品を出荷して終わりではなく、販売店や卸先でも販路開拓や試飲販売、情報収集、調査を欠かさない。
珈琲とお茶という2つの販路で培ってきたそれぞれの良さやノウハウを、相乗効果で発揮している。
派手にお店を構えなくてもいい。年数を重ねていくこと、お客さんを大切に、意思疎通をしたい。それがビジネスの側面でも、やっていてよかったという想いに繋がっている。
経験して失敗して積み上げてく。やるからには成功する腹つもりではいるけれど、やってみないと分からないこともあるし、ブレーキをかけずにやってみたら良いと思う。
関わる人やお客さんに対しての距離感やモチベーション、人柄も、事業を軌道に乗せている秘訣なのではないだろうか。
人と人との関りを大切にし、異業種から学ぶ、お客さんの声を大切にする。珈琲をやったからこそ見えてきたこと、そしてそれをお茶に活かしている。
珈琲の販路にお茶を。
掛川一風堂だからできることを、奢らずコツコツと続ける。
二刀流といういばらの道を進んできたからこそ、今見えてきた新しい風。
「掛川一風堂」の快進撃はまだまだ続きそうだ。