【県内最大のオーガニック農園】”しあわせ野菜畑”にお邪魔してきました!

味が濃く、野菜本来のおいしさが体感できる”しあわせ野菜畑”さんで、有機野菜の魅力とともに、オーナー大角さんの農業への想いや取り組みについてお話をお伺いしてきました。

株式会社 しあわせ野菜畑とは?

掛川市内に東京ドーム1.5個分の広大な農園を持つ”しあわせ野菜畑”。

国内でも数少ない”有機JAS認証・JGAP認証”を取得しているオーガニック農園では、年間約50品目の野菜を栽培し、全国各地のお客様・飲食店へ直送しています。有機野菜セットのほか、野菜の味が詰まったジュースや野菜加工品の製造販売にも取り組み、規格外の野菜を利用したシェフセットは、地元の人気レストランはじめ多くのシェフにも愛されています。

しあわせ野菜畑流の農業について教えてください

<しあわせ野菜畑流の農業>

◆露地栽培へのこだわり・・・ハウスや温室を使わず、自然環境での栽培

◆化学農薬不使用・・・・・・化学農薬や除草剤を使用せずに栽培

◆化学肥料不使用・・・・・・有機肥料を使用しての栽培

オーガニック野菜に取り組んだのは、何かきっかけがあったのですか?

オーガニックに最初に出会ったのは、掛川市の姉妹都市ユージン市でのオレゴン農場研修です。

もともとはカリフォルニアの大規模農業にあこがれていたのですが、オレゴンではオーガニックが市民生活に溶け込んでいて、こういう農業があるのかと刺激を受けました。

その数年後、環境保全型農業の視察研修でヨーロッパの国々に行かせていただきました。ドイツのスーパーでは主食のジャガイモが、有機のものは値段が7倍もしていました。美味しいのかと聞くと、そうではないとのこと。それでも購入する人々がいるのは、「外部の力を借りないで、その土地が持っている最大限の力を引き出して育った魅力」が有機農産物にあるからだ、と説明を受けました。

最初は理解できなかったのですが、オーガニックの魅力というのは、この農法に「人の生き方の原点」みたいなものがあるからではないかと思いました。

しあわせ野菜畑 大角さん

日本ではオーガニックを購入するのは「安心安全」とか「味が良いこと」が目的だと思うのですが、外国ではオーガニックの考え方が違うということですか?

ヨーロッパの有機農業は「環境保全のために持続的な生産が行われること」が目的です。その土地が本来持っている力で作物が作られていることが重要で、味が良いことは目的ではなく結果であるという考え方のようです。SDGsがらみで有機農業が取り上げられるのは、このような考え方からです。

しあわせ野菜畑 大角さん

SDGsという言葉を最近よく聞きますが、SDGsとオーガニックはどう関係するのですか?

SDGsとは「持続可能(サスティナブル)な開発目標」のことです。有機農業は持続可能な農業であり、環境保全型農業です。農薬と化学肥料を使用しない農場は生物多様性に富んでいます。農場には虫もいますが、虫を食べるテントウムシやカエルやクモがいます。トンボやキジが現れ、ウグイスの声が1日中聞こえます。イノシシとカモシカは困りものですが、野ウサギやキツネを見たときは感動をしました。

また、オーガニック野菜は季節ごとの旬の野菜です。温室やハウス栽培で冬に暖房をすることがないので、二酸化炭素を排出しません

オーガニックは食すことがSDGsです。

しあわせ野菜畑 大角さん

有機JAS、JGAP、コーシャ認証を取得

近年よく耳にするようになった”オーガニック”という言葉ですが、大角さんのお話を聞き、海外と日本の”オーガニック”という言葉の認識の違いに驚いた人は多いのではないでしょうか。筆者自身もまた、オーガニックと書かれているから安心・安全と思っていた1人です。

しあわせ野菜畑では、安全・安心な野菜をお届けするため、残留農薬検査、水質検査、土壌検査、放射能検査を実施

◆”オーガニック=有機野菜”であることを保証する「有機JAS認証」

◆食の安全や自然環境と労働安全が守られていること、環境保全に取り組んでいる証しである「JGAP認証」

◆アメリカやヨーロッパで食の安全の目安として信頼されている「コーシャ認証」

の3つを取得しているそうです。

実際に、これらの厳しい認証審査をクリアし、本当の意味でのオーガニック栽培を行っている農園は日本で僅か0.2%しかないというのには驚きを隠せません。

近年では、工業製品の取引にISO取得が求められるように、農産物にGAP取得を求められる時代になってきているそうですが、しあわせ野菜畑では、5年前にJGAPを取得し、東京オリンピック・パラリンピックへの食材提供を実現しています。

こうした一つ一つの取り組みが、野菜のおいしさの秘密であり、顧客からの信頼を得る大きな理由なのだと感じます。

目指すのはエシカル(倫理的)でサスティナブル(持続可能)、人と環境に優しい農業

改めてオーガニック野菜の魅力を読者の方へお伝えいただけますか?

オーガニック野菜は生命力がある元気な野菜です。同じ袋のタネを用いて、同じように育てても、全部が同じように育ちません。大きくなるものは大きくなりますが、小さなものはそれなりの大きさにしかなりません。虫に食べられたり病気になっていなくなってしまうものもあります。

化学肥料を使うと比較的すくすくと均一に成長します。農薬を使えば虫に食べられないし、病気にもなりません。しかし、見た目が同じでも、そのものが持っている生命力は違うはずです。

オーガニック野菜は味が濃く、香りがして、野菜本来の味がします。時にはオーガニック野菜でアトピーや病気が治ったという話をいただくこともあります。それらはオーガニック野菜だからというより、オーガニックというフィルターを通して生命力がある元気な野菜が残り、そんな野菜を食べていただけたからではないかと思います。

しあわせ野菜畑 大角さん

病気が出たり、虫に食べられてしまうと収穫できる量が減ってしまって困らないのですか?

野菜の病害虫を防ぐコツは、「三密を避けること」です。株と株の間隔を広げ、風通しを良くし、季節に合わせた旬の野菜つくりをすることで、病気や虫に被害を避ける工夫をしています。

それでも病害虫に負けてしまう野菜が出てきますが、そんな時には収穫できなかった野菜は「天使の分け前」だと思って、がっかりしないように心がけています。

しあわせ野菜畑 大角さん

収穫できなかった野菜は「天使の分け前」とは?

ワインやウイスキーの蒸留所では、木製の樽からアルコールや水分が揮発してしまう減少分を「天使の分け前」と言います。ステンレス製の樽にしたら目減りはしません。しかし、天使が飲んでくれるからこそ、いただくことができる味わいがそこにはあります。そう信じて木製の樽を使い続ける生産者と、そうやって熟成された味や香りを愛し楽しむ人と、そんな考え方を大切にする伝統や文化があります。

虫に食べられている野菜があっても目くじらを立てないこと、いつの間にか消えてなくなってしまう野菜があっても動じないこと。それらは全部天使への分け前であり、だからこそ、天使からいただける「野菜のおいしさ」や「野菜の力」があるのだ、そんなふうに考えています。

しあわせ野菜畑 大角さん

しあわせ野菜畑代表:大角さんの農業への想い

農業教員としての経験、国内での研修、世界各国の園芸・農業の研修を経て、しあわせ野菜畑の運営に辿り着いた大角さんの想いを伺いました。

大角さんは元農業高校の先生だとお伺いしています。農業高校の先生から起業を目指したのはなぜですか?

農家の長男であった自分は、卒業したら農業を継ぐつもりで大学の農学部に進みました。専攻も農業経営学だったのですが、どう考えても農業で楽しくて豊かな生活が送れるとは思えません。農学部の友人たちの大半も公務員を目指しており、自分も農業高校の先生になりました。

教員生活は楽しくて充実していたのですが、生徒から進路相談で「先生、将来農業をやりたいのですがどうしたらいいですか」と質問された時に、「とりあえず、大学の農学部へ進学したらどうかな」としか答えられず、それでいいのかと自問自答していました。

時々、勉強や部活動で「そんなこと無理だよ」と思っていた夢を実現してしまう生徒がいて、そんな彼ら彼女たちがとっても、まぶしく思えました。

そんなことで、「農業の可能性を伝えたかったら、自分自身がやってみよう。農業に興味を持った生徒や学生を受け入れられるような農業経営体を目指そう」と思い、起業しました。

しあわせ野菜畑 大角さん

野菜宅配セットとして、たくさんの種類の野菜を栽培しているのはなぜですか。

オーガニック野菜は大きさや形がバラバラなため、市場出荷に適しません。

また、オーガニック野菜は手間がかかるので栽培原価が高く、流通マージンが上乗せされるととても高いものになってしまいます。そこで、中間コストを下げ、野菜宅配セットとしてお客様にお届けしています。

野菜宅配セットとしてお届けするためには、常に15種類以上の野菜の種類が必要で、結果的に年間では50種類以上の野菜を育てています。

しあわせ野菜畑 大角さん

たくさんの野菜を栽培するのは大変だと思うのですが、多品目栽培に取り組むきっかけって何かあったのですか?

教員時代、かつてのシルクロード「西域」と呼ばれたカシュガル、ウルムチ、ホータン、トルファンといった「オアシス都市での衣食住に関する学術調査隊」に行かせていただきました。

オアシスというと砂漠の真ん中に泉があり、その周辺に小さな集落があるというイメージですが、現実のオアシスはとても大きく、山脈からの雪解け水を使ってたくさんの農作物が作られていました。  

その村で頂いた食事がとてもおいしく、それ以上に感動したのが村長さん挨拶でした。

「遠い日本から、砂漠の中の小さな村に来ていただいてありがとうございます。何もない村ですが、本日用意させていただいたお米もパンも、野菜や肉や果物も、ジュースやお茶やお酒もすべてこの村で出来たものです。」

それを聞いて、とっても贅沢だと思いました。日本人は「選りすぐり」が大好きです。全国各地から選び抜かれた食材で料理することが、こだわりとされます。しかし、考えてみると、それはバブルの時代にロシアからキャビアを、フランスからフォアグラやトリュフを空輸して有り難がっていたのと、あまり変わらないのではないかと思いました。

シルクロードのオアシスの町で、「本当の食のこだわりとは、その食材が育った物語を知ること、伝えることではないかな」、そんなことを考えました。

しあわせ野菜畑 大角さん

さまざまな角度から農業を研究し、現在は”農業の可能性を追求すること”・”アグリビジネスとして有機農業を成立させること”という目標で活動をされているそうですが、具体的にどのような活動をされていらっしゃるのですか?

農業の可能性というのは、農業を経営として成り立たせるということです。有機農業は手間がとてもかかるので、単に栽培するだけでは経営が成り立ちません。農産物を使った加工品を作ったり、野菜宅配セットとしてお客様と直接つながっているのはそのためです。

販売するには、しあわせ野菜畑の野菜と会社自体に魅力と存在価値がなくてはいけません。農場見学・収穫体験ツアーを実施したり、市民農園を開設しているのは、そのような取り組みのひとつです。

しあわせ野菜畑 大角さん

大角さん プロフィール-

掛川市生まれ。お茶とお米とイチゴの専業農家で育ち、静岡大学農学部農学科卒、専攻は農業経営学。静岡県高等学校の農業教員として25年間勤務後、47歳で高等学校教員を退職し、研修を経て2009年に起業、2012年に株式会社に移行。

農業教員在職中にオランダとイギリスの花卉園芸、カリフォルニア州とオーストラリアの大規模農業、ドイツの環境保全型農業、アメリカのオレゴン州のオーガニック農業、中国新疆ウイグル自治区のオアシス農業、タイとベトナムの熱帯農業、フィリピンにおける植林研修など海外農業の研修など、さまざまな経験を積み、国内での研修を経て起業。

農場見学・収穫体験ツアー・市民農園への取り組み

しあわせ野菜畑のキャッチフレーズ

「お届けするのは“生きる力”、伝えたいのは“野菜の物語”」

それを体感できるのが、農場見学・収穫体験ツアー・そして市民農園への取り組みです。

野菜たちがどんなところで育っているのか、どんな思いで育てられているのかを知ると、もっと野菜がおいしくなる、そんなことを考えて始めました。農場見学・収穫体験つあーは、開催日を定めて定期的に実施しています。HPにてご案内しているので、ぜひ参加してください。

しあわせ野菜畑 大角さん

光陽の里にある”農薬を使用しない市民農園”では、「サポート付き市民農園」「一般型市民農園」「営農型市民農園」の3つのタイプから選び、栽培方法を勉強しながら野菜を育てる農業体験ができます。

子ども達の健康や、環境保全を考えた野菜つくりに興味のある方はぜひ、参加してみてはいかがでしょうか。

現在のお客様の多くは首都圏です。昨年からは海外輸出も始めました。同時に野菜セットを直接取りに来てくださる地元のお客様も少しずつ増えています。

掛川の土は粘土質で栄養分を保持する力が強く、野菜が味が濃くて旨味があります。

掛川産の野菜を食べて、野菜好きの方が増えてくれることを願っています。

しあわせ野菜畑 大角さん

しあわせ野菜畑のこれから

すでに多くの想いを実現してきている大角さんですが、しあわせ野菜畑としてさらに、これから目指したいもの・考えていることはありますか?

今働いてくれているスタッフが安心して、楽しく長く働ける職場になるように、もう少し規模を大きくしたいです。

同時に、今野菜をお届けしているお客様に美味しく食べていただき、新たなお客さんが増えるような野菜を作り続けたいです。

そして、地元の人が、しあわせ野菜畑がここにあるおかげで、自然環境が豊かになって、地域に幸せを運んでいるといわれるような会社にしていきたいです。

しあわせ野菜畑 大角さん

掛川の皆さんに、この記事を読んでいる全国の皆さんにメッセージをお願いします

農場見学・収穫体験ツアーをやっています。見ていただいて、味わっていただいて、野菜セットを購入していただけたら幸いです。

しあわせ野菜畑 大角さん

<取材を終えて・・・>

取材序盤は、野菜への取り組みや想いを語る大角さんの熱量に圧倒されていた筆者でしたが、取材を進めていく中で、農業を本気で楽しんでいる姿、気さくな人柄を垣間見ることができ、大角さんのやさしさや思いやりこそが、有機野菜栽培の原点なのだと気づかされました。

しあわせ野菜畑の農園にお連れ頂く道中では、大角さんが人生をかけて得た農業知識を惜しみなくお話くださりました。お別れする頃には、食への意識が変わり、毎日身体の中に取り入れる食に関して無知であったことを実感したとともに、こんな素敵な食育の場が掛川市内にあることへの誇りを感じました。

全国でも数少ない有機農園が掛川に!!

家族のため、自分自身のため、食を大切にしたいと願う全国各地の顧客や飲食店だけでなく、地元の有機野菜を食べたい、子どもに食育をしてみたいという県民・市民の憩いの場としても、多くの方の健康を支え続けるしあわせ野菜畑。これからもたくさんの人々へしあわせを届け続けて欲しいと思います。

<ABOUT しあわせ野菜畑>

住所:静岡県掛川市上西郷2454

TEL:0537-28-0712

HP:https://yasai888.com/74389/