とろろ本丸|掛川名産の自然薯が美味しい「とろろ定食」をレビュー

ふと思い立って入った「本丸とろろ」でランチを注文したところ、ご主人がおもむろにやってきて、とろろについて丁寧に説明をしてくれました。

その説明が、提供前のとろろの粘り気などをわざわざ確認させてくれるなど、とても熱が入っているのです。

「このお店にはただならぬ意気込みを感じる…」

そう思った筆者は、日を改めて取材を申し込んだのでした。

今回は掛川インターからほど近くにある、本格的な自然薯が食べられるお店として有名な「本丸とろろ」をご紹介します。

<とろろ本丸>

住所 〒436-0029 静岡県掛川市南2-14-2
TEL 0537-23-8811
営業時間 [昼] 11:00~14:00(LO 13:30)
[夜] 17:00~20:00(LO 19:30)
定休日 水曜日(振替休日あり、水曜が祝祭日の場合は営業)
月曜日の夜
火曜日の夜
※不定休の場合あり

ホームページ
https://imojiru-honmaru.com/

自然薯の美味しさをとことん味わう。絶品とろろ定食の魅力をレビュー!

▲とにかく粘りがすごい。本物の自然薯の実力が一目瞭然

取材日の当日。お店に伺うと店主が麦とろろ定食「日坂峠」を用意して待っていてくれました。

「取材用に用意したので遠慮なく食べてください」

そうおっしゃる店主。笑顔はまるで福の神に見えます。
さっそくカメラを取り出してとろろ定食を撮影しつつ、味わわせていただきました。

▲「日坂峠」は2種類のとろろ料理が味わえてオススメ

さっそくお食事をいただくことに。
とろろを熱々のご飯にかけると、その粘りの違いに気づきます。ふだん自宅で食べているとろろはもっとサラッとしていたように思うのですが、こちらのお店のとろろはねっとりどっしりとした感触です。

ご飯と一緒に頬張るとなんとも言えない豊かな香りとしっかりしたとろろの味わい。

「これまで食べていたとろろは何だったのだろう…」

思わずそんな疑問が頭に浮かんでしまうほど、本丸とろろで食べた自然薯は美味しかったです。

▲揚げとろはフワッとしているのに弾力がすごい

さらに、この定食には「揚げとろ」が付いています。揚げとろは、とろろをたわら状にして揚げたもので、フワッとした噛みごたえがクセになる一品です。タレとの相性も抜群で、日本酒などのお酒にも合いそう。

食べ方次第で色んな表情を見せてくれるとろろは、本当に奥が深いなぁと感じました。

先代のバトンを引き継ぎ、本物のとろろの味を守る

▲「とろろ本丸」二代目のご主人、天野和男さんにお話をうかがいました

ーーごちそうさまでした!本当に美味しかったです!

喜んでいただけて良かったです。

ーーこちらのお店ってまず建物が立派ですよね。とても歴史があるように見えるのですが、いつからやっているのですか?

よくお客様に聞かれるんですが、実はまだそれほど歴史はないんですよ。創業が平成元年の暮れなので、まだ30年くらいなんですよね。
ちなみに私たちは二代目として平成19年からやっています。まだ約10年ですね。

▲まるでお城のような外観。まさに「本丸」感が漂う

ーーなるほど。二代目ということは、ご両親がやられていたお店なのでしょうか?

実はそうではなくて、先代がうちの両親とつながりがあったんですね。そこから「お店をやらないか」という話があって。

先代は「とろろをやらなくてもいいから、自分たちで好きにやりな」と言ってくれたのですが、やっぱりそれまでやってきたことをゼロにするのは良くないなと思い、そのままとろろのお店として引き継いでいます。

ーー先代のバトンをしっかりと引き継いだわけですね。でもいきなりとろろのお店をやるって大変じゃないですか?

私は寿司職人からスタートして割烹料理も経験してきましたが、とろろはまったく初めてでした。ただ、うちの妻の実家が自然薯を作っていて、そういう部分では間接的につながってはいたんですよ。
とろろのお店を始めるにあたって、実際に農場に行って、自然薯の作り方や出荷までの流れなどを学ぶことができたのは大きかったですね。

ーーそれは心強いですね。

それでもいよいよお店を始めようとしたタイミングで、2人目の子どもが生まれたんです。

上の子どもはまだ3歳で手がかかっていたのですが、さらにもう1人なので大変でしたね。
2人で交互に子どもをおんぶしながらお店をやっていたのを思い出します(笑)。

ーー小さな子ども2人に加えてお店のオープン。想像しただけで大変そうです…!

「芋ってなんぞ?」自然薯を学ぶ旅に出る。

▲店内は落ち着いた和の雰囲気。カウンターや座敷、2Fも使えるのでかなり広々している

お店をやるにあたって、実際に山に芋を掘りに行くなどするわけですが、「芋ってなんぞ?」という疑問が湧くわけです。だから自然薯を学ぶ旅にも出ましたね。

ーー旅と言いますと?

例えば、つくね芋の産地で言えば三重県が有名です。いちょう芋や大和芋はどこですかって言ったら千葉が名産地で、中でも多古産が一番になります。長芋って言ったら、やっぱり雪が深い長野などが有名なわけです。

有名な産地を訪れて山芋を買ったり、生産者の方に直接教えてもらったり、そうやって色々と勉強しました。

ーーすごい勉強熱心ですね。僕は未だに山芋の区別がつきません…。

同じものでも地域によって呼び方が変わるので難しい部分はあると思います。一番いいのはその道で長い人に聞くことですね。ただ食べてみると全然違うのでわかると思いますよ。

少しでも自然薯のことを知ってもらおうと思って、最近は手が空いたときにお客様のところに行き、自然薯を見せたり説明したりし始めたんです。

ーー先日頂戴した説明は最近始めたばかりだったんですね!実際に色々とお話をうかがうと、自然薯のことや、どんな想いでお店をやられているのかがよくわかってとても良かったです。

本物の自然薯を育てるのは大変。一瞬の美味しさを守りたい

ーー自然薯って、実際どのくらいの期間でできるものなんでしょうか?

早ければ6年。大体6〜8年はかかりますね。

ーーえっ…!そんなにかかるんですか!?まるでセミのようですね…。

この期間をできるだけ短くできないか、という課題はあるんだけど、それをやり過ぎてしまうと味に影響が出てしまうから難しいんです。

例えば化学肥料を使えばすぐに大きくなるのは分かっているんだけど、それはやっぱりしたくないんですよ。
だから落ち葉を拾って発酵させて土の中に入れたり、土の中にミミズを入れたりして土壌改良をするんです。

ーーそれは手間がかかりますね。

1人では難しいので、周りの方に手伝ってもらいながらやっていますね。
時代のニーズに合わせることはもちろん大事だと思いますが、守れるものは守っていきたいと考えています。

ーーでもやっぱり大変なことですよね。6〜8年かけて育てても、食べるのは一瞬なんて…

でもその一瞬に価値があるんですよ。

素材の味をそのまま味わって美味しいと感じられるもの。それが本物だと思うんです。
まあ、本物は稼げませんが…(笑)

ーー(笑)そこまでこだわりを持ってやられていることに感動しました。ぜひ多くの方に一度こちらの自然薯を味わっていただきたいですね。本日はどうもありがとうございました!

取材を終えて

今回の記事は、何気なく入ったお店で一風変わった店主に出会い、美味しいとろろ定食を味わったことがきっかけで生まれた。

店主が話しかけてくれなければ、「美味しいとろろを食べられてよかった」くらいで終わっていたかもしれない。
しかし、店主がわざわざ話しかけてくれて、自然薯について丁寧に説明してくれたこと。
それによって僕自身の自然薯に対する考え方も変わったし、「とろろ本丸」に対する見方も変わった。

こうして真剣に取り組んでいるお店が掛川にあるというだけで本当にうれしくなる。
これからも折に触れて訪れたいと思うし、「掛川でおすすめのご飯どころはどこ?」と聞かれたらまず「とろろ本丸」を案内したい。

色々とご馳走様でした!