美しい”茶畑”・東海道五十三次の宿場町”日坂宿”・自然豊かな”粟ヶ岳”など名所がいっぱいの掛川市日坂。
この地で古民家宿「旅ノ舎」を運営するオーナーの山田さんにお話を伺ってきました。全国各地から旅人が集まるその魅力をご紹介します。
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「体験型古民家宿 旅ノ舎」ってどんなお宿?
東海道五十三次の宿場町”日坂宿”からすぐの場所にある「旅ノ舎」。元お茶農家さん宅の空き家をリノベーションし、2017年にオープン。5年目を迎えた今年、脇屋をリノベーションし、ますます魅力的な宿となりました。
1人旅からご夫婦旅、ご家族連れやワーケーション、さまざまなスタイルの旅人を魅了する「旅ノ舎」の秘密は、オーナーである山田さんご夫妻の温かいおもてなしと、”観光”以上”移住”未満の里山体験。
茶農家さんと触れ合いながら”茶摘み体験”や”茶畑さんぽ”、”山菜採り”や”たけのこ掘り”、”沢遊び”に”栗拾い”といった四季折々の里山体験ができます。ガイドブックには載っていない、旅先での日常に入り込んで自然の中で心をリセットする。そんな時間を過ごすことができます。
古民家をリノベーションした宿では、おばあちゃん・おじいちゃんの家に遊びに来たような懐かしさと、歴史ある日本家屋での滞在が、訪れる人達を癒しています。宿で体験する、掛川名物「自然薯」を使った”芋汁作り”や、地の食材をたっぷり使った地産地消のお食事、茶農家さんが丹精込めて作った掛川茶もまた、多くの人の心に残る想い出となっています。
お茶の魅力や生産者さんの声を届けたい!
-旅ノ舎をオープンしたきっかけを教えてください
僕は、掛川で生まれ育ったけれど、子どもの頃はお茶のことも宿場町のことも全く知りませんでした。長く旅行会社に勤めて日本中を歩き、30年ぶりに戻ってみると、とても魅力がある場所だということに気が付いたんです。
掛川のお茶のおいしさを改めて知り、農家さんとの交流の中でお茶業界の厳しい現状も聞きました。多くの人がお茶の魅力を知らないままお茶離れが進んでいて、日本の大切な茶文化がなくなっていっている現状を伝えたいと思ったんです。
珈琲は、豆から挽く・インスタント・缶コーヒー・豆の種類と、いろいろな選択肢があるのに、お茶のことはみんな知らない。お茶にも、たくさんの飲み方があって、種類も味も全然違う。その土地ならではのお茶の種類や飲み方、生産者さんの声が全然届いていないと感じました。僕が出来ることは、その声をちゃんと伝えていくことだと思っています。
”ここに来てくれた人には、茶農家さんを紹介して、茶畑に行って話を聞いて、お茶を淹れて貰って、お茶や地域のことを分かって帰って頂く”。訪れる人の中には急須を持っていない人もいるけれど、本当においしいお茶を飲んで貰うと、帰りに「急須を買って帰る」と言ってくれる。知って貰うことでそうやって繋がっていけばいいなと思っています。
丘陵に広がる茶畑が好き。この景色はここだけ!
-旅ノ舎でしかできない体験を教えてください。
来てくれたお客様には、お茶処である東山一帯の茶畑や粟ヶ岳、小夜の中山、日坂宿なんかを、お客様の希望に合わせてご案内しています。
農家民宿の利点は、宿泊のお客様をご案内できること。ホテル+ツアーのようなオプションだと、興味があっても躊躇してしまう人もいます。旅ノ舎では、宿泊者皆さんに里山体験をして頂いているので、楽しみながらこの土地の価値を認めて貰えたら嬉しいですね。
この辺りは掛川丘陵地帯で、丘陵に畑が広がっている景色が北海道の美瑛と似ているんです。台地に広がる茶畑の景色も良いですが、丘陵に広がる茶畑が僕はきれいで好き。この景色はここだけなんです。茶文字もあって、かっぽしテラスもあって。
-到着からの流れを教えてください
15時チェックイン⇒茶畑ご案内(季節によってはタケノコ掘り、裏庭で焚火や焼きいも、歴史が好きな方なら日坂の宿場にご案内するなど、希望に合わせて自由にご案内)⇒芋汁体験・お食事⇒古民家でゆっくりタイム
コロナ前は1日2組だったんですが、今は1組限定で貸し切りにしています。お子さんは、2階と1階を自由に行き来したり、1階で一緒にこたつに入ったりして過ごすことも多いですね。
-現在リノベーション中の脇屋はどんな風に利用されるんですか?
現在リノベーション中の場所は、ワーケーション用に作っています。1棟貸しなんかも考えているので、リノベーションした部屋は、お客さんの趣味の部屋や子ども達の遊び場なんかに出来たらと思っています。
この土地の人達の生活リズムを守りながら、想いを伝えていきたい。
-こういった里山体験は、多くの人たちに伝えていきたいですね!
お茶や里山に興味のある人はもちろんですが、子ども達や海外からのお客様にも民泊をして貰って、地元の人と肌で接して、この土地の魅力を感じて欲しいですね。
同じ市内でも、このあたりの小学校では茶摘みの体験などがあるけれど、街中の子ども達はお茶のことを知らない子も多いです。本来は街の子ども達にこそ、そういう体験をして貰うことが大切ですよね。
多くの方に掛川の良さを伝えていきたいけれど、ここの人達の生活リズムを崩してはいけないという難しさもあります。繁忙期に茶農家さんの手が止まってしまうのは・・・。
最初に民泊を始めた時は、忙しい時期に協力はできないという声も多かったんです。それが少しずつ5分でも10分でもと、作業の合間で話をして貰ったり。今の活動を維持していくためには、地域の皆様の協力が不可欠ですが、負担の無いようにしないといけないですね。
お食事プランにしても、1棟貸しプランにしても、体験型というのにはこだわりたいし、お茶畑体験や芋汁体験などはずっと提供していきたい。だからこそ、地域の人や近隣の飲食店、お茶工場などとの関係性も、時間をかけてじっくり築いていきたいと思っています。
茶畑・茶文字・粟ヶ岳・富士山を望む「茶の道 ロングトレイル」
-旅ノ舎をやっていて良かったことは何ですか?
お客様と一緒にお茶の景色を見て、お茶農家さんと話して貰って、喜んでお帰り頂けた時が1番嬉しいですね。それがあるとやっていて良かったなって思います。
-世界農業遺産「静岡の茶草場農法」 ビジネスアイデアプランコンテストでグランプリを獲得されたそうですが、これからの旅ノ舎はどうなっていきたいですか?
県のお茶振興課が公募した企画で「歩きたくなる茶の道 ロングトレイル」という企画を出しました。
歩くことで車や自転車では感じることのできないその地域の暮らしや文化などを感じてもらい、地域の人たちの触れ合いの機会も得られるのではと考え企画しました。
現状、東海道を歩く人たちは県外からが多く、粟ヶ岳を歩く人たちは市内や県内の人たちが多いんですよね。東海道と粟ヶ岳掛川丘陵に広がる茶畑を通じて繋がっていますが、両方を歩く人はほとんどいません。
なので「茶の道ロングトレイル」として紹介していくことで、この地域全体を知ってもらい、この地域の主産業であるお茶を知ってもらうきっかけになればと考えています。
有名な中山道の「妻籠馬籠」は欧米の旅行者が9割だそうです。わざわざ海外からそこを目的に来る人がいるし、日本人でも感動しますね。
ここにはそこまでのものはないけれど、東海道の中では石畳が残っているのは箱根とここにしかないし、日坂には旅籠もある。さらにこの地域は欧米人が好きな日本有数の緑茶の産地です。そこをフューチャーして、中山道を歩く人が少しでもこちらに来てくれたらとも思っています。
茶畑を一望する絶景テラスが点在する「茶の道 ロングトレイル」実現に向けて動き出しているので、茶畑が見える、茶文字も見える、富士山も見えるというような空間で過ごして貰いたいですね。
日本の文化・伝統・人の温かさに触れる宿「旅ノ舎」
地元の人だから知っているその土地の美しさ、人の温かさ、自然の豊かさ。個人旅行では体験できない素敵な時間を過ごすことができる旅ノ舎さん。掛川の茶畑の魅力を伝えながら多くの旅人の心を癒してくれる素敵なお宿でした。筆者も、子ども達を連れて近く再訪したいなと思っています。
【体験型古民家宿 旅ノ舎~Tabinoya~】
住所:静岡県掛川市大野1708
TEL: 0537-54-1464
HP: https://www.tabinoya-oldjapanese.com/
Instagram: https://www.instagram.com/tabinoya2017/