先日の記事「【掛川ビールも楽しめる】「チョッピングパーティー&シネマ」は食と料理の大切さを感じられるあったかイベントだった!」の中で紹介した「ノイズカレー」さん。
お話を聞かせていただく中で、彼が現在、11月10日まで掛川で開催の「原泉アートデイズ!」というイベントに参加していることを知りました。
パンフレットをめくると、このようなことが書いてありました。
古代より、川は人の営みを支え、文明を生み、文化を育んできました。
時に優しく人の生活に寄り添い、水のある生活を生み、時に大胆に人間にとって脅威となり、地形を作ってきました。原泉でも、中央に流れる原野谷川の存在のもと、生活を営んでいます。
原”泉”という地名の通り、泉が湧き出る地域であり、その泉の資源とともに暮らしている地域です。美味しいお米、美味しいお茶、美味しい風景、多様な生きものたち、これらは全て、泉の恵みとつながっています。水資源は、人の命や暮らしを支え、自然の恵みをより豊かにし続けています。
泉とともにある暮らしを、もう一度その意識の中に取り入れ、原泉の豊かさを見つめてもらいたいと思います。
単にアートを見てほしいということだけでなく、”原泉という土地が持つ豊かさを一緒に感じてもらいたい”そんなメッセージが伝わってきます。
俄然興味が湧いた僕は、さっそく翌日「原泉アートデイズ!」に行くことを決めました。
そしてまだあまり広く知られていないこのアートイベントが、本当に本当に素敵なものだったのです……!
Contents
「原泉アートデイズ!」は、芸術の力で地域の魅力を発掘する現代アートイベント
▲クオリティの高い動画に脱帽、、、構成もすばらしい
イベントを訪れる前に「原泉アートデイズ!」のことをある程度知っておこうと、ネットを使ってリサーチしました。
検索すると「原泉アートプロジェクト」というホームページがヒットします。
ところで、僕は地元の人間なのですが「原泉」という地名を聞いたことがありませんでした。それもそのはずです。
「原泉」という地名は、西から大和田、孕丹、萩間、居尻、黒俣の5区を総称して呼ばれる時に使われたり、郵便局・茶業組合などの公的な施設に固有名詞としてつけられることはあっても、不思議なもので、現在地名としては存在していません。
ー原泉アートプロジェクトHPより引用
例えば静岡県西部は「遠州」と呼びますが、意味合いとしてはそれに近いのかもしれませんね。
原泉アートプロジェクトは、静岡県掛川市の北部に位置する「原泉地区」で現代アートによって地域の魅力をみつけていくプロジェクトです。
ー原泉アートプロジェクトHPより引用
つまり大きな枠組みとして、原泉地区をアートで活性化させる「原泉アートプロジェクト」があり、その中のメインイベントが今回取材する「原泉アートデイズ!」である、そんな認識で良さそうです。
「原泉アートデイズ!」の中身をざっくりと確認してみよう!
「原泉アートデイズ!」を、まずはマップとパンフレットで確認してみましょう。
メインの受付会場となる旧掛川市JA原泉支所は、掛川駅から車で北に上ること約20分。
近くにはソフトクリームで有名な「しばちゃんランチマーケット」があり、さらに奥に行けば「ならここの里」があります。
「原泉アートデイズ!」は1つの会場で作品が展示されているわけではなく、原泉のエリア一帯を使って展示されています。
週末にはワークショップが用意されており、アートを体験できるのも大きな魅力です。
「原泉アートデイズ!」を実際に巡ってみた!
それでは実際に「原泉アートデイズ!」を巡ってみましょう!
まずは受付となっている旧掛川市JA原泉支所へ行き、巡回の方法やドネーション(寄付)などについて説明を受けます。
この会場には、『幻の可視化』(野々上聡人さん)のアート作品が展示されています。
異次元の世界観漂う前衛的なアート。「いきなり来たな!」というブッ飛んだ感じに、この後のアート巡りに否が応でも期待が高まります。
ちなみに冒頭でも少し触れた「ノイズカレー」のパフォーマンスも、この会場で行われていることが多いようです。
様々なノイズをふんだんに混ぜ込んだカレー(味は日によって変わる)を楽しめるので、ぜひご賞味ください!
「さくら咲く学校」に飾られている、中瀬千恵子さんの作品が凄かった!
次の会場は「さくら咲く学校」です。
旧原泉小学校であるこの学校は、現在地域のコミュニティー施設として活用されています。具体的には「アーティストの活動拠点」や「アトリエ教室」になっているようで、こういう使われ方はとてもいいですよね。
この会場では、中瀬千恵子さんの作品を見ることができます。
中瀬千恵子|Chieko Nakase
10歳から油絵を始め、高校美術教諭や国内外での活動を経て、平成23年島田障誠高校退職後、4月からさくら咲く学校をアトリエに作家活動や絵画教室を開催している。これまで数々の美術展に出展し、受賞歴も多数。
【主な受賞歴】●日仏代表作家展賞(フランス パリ)●トルコ日本芸術勲章●チェルシー国際芸術大賞(アメリカ ニューヨーク)●ジャンヌダルク栄光賞●クイーンシリキット女王杯(タイ バンコク)●アジア教育芸術賞●日本アジア航空賞●ニース芸術大賞●浜松市芸術祭市長大賞●タヒチ大統領賞●アート未来内閣総理大臣賞●アート未来準大賞●日光東照宮芸術大賞 他多数受賞
【個展】三岸節子美術館●静岡県立美術館●アートミュージシャン銀座他
【所蔵】浜松市美術館、常葉大学、マケドニア、タイ、日光東照宮他
【海外での活動】マケドニア・アートコロニー招待作家制作、タイ現王謁見作品寄贈、フランス・イタリア・オーストリア他多数
ー原泉アートプロジェクトHPより引用
実は今回僕が1番楽しみにしていたのがこの会場でした。パンフレットに載っていた絵の写真を見て、ひと目でその絵に魅了されてしまったのです。
そしてなんと会場には千恵子先生がいらっしゃり、直接お話を聞かせてもらうことができました!
展示された作品のアーティストと直につながることができる、これがこのイベントの醍醐味ではないでしょうか。
素人ながら絵を見た感想を言わせていただきますと、千恵子先生の作品は一見、何を描こうとしているのかよくわかりません。とても抽象的な作品です。
だからこそ、見る側次第でいくらでも解釈できるおもしろさがあります。そしてその見方に耐えることができるのは、奥深さを持った作品だけです。
千恵子先生の作品はずっと見ていても、全然見飽きることがありません。まるで長い長い長編小説を読み進めているような、そんな感覚に陥ります。
1枚は先日描き上げたばかりということでしたが、まるで遥か昔に描かれたような佇まいです。アンティークのようにも見える、本当に奥深い作品だと思いました。
お茶工場やお寺、廃棄されたバスでの展示。枠にとらわれないアート作品が目白押し!
学校を出てさらに道を上っていくと、茶工場やお寺、廃棄されたバスなどを使ってアートが展示されています。
▲4番『川』水戸部春菜さんの作品
使われていない茶工場はだだっ広い静かな空間。「しん」とした中でアートを感じることができます。
▲5番『Outline 1』ハナ・ワイデスさんの作品
お寺に配置された色取り取りの「手」をモチーフにした版画とオブジェ。
思わず仏教的な意味合いに思いを巡らせてしまいます。
▲一見ボロボロの廃バスですが、中には所狭しと描かれたアートが
▲7番『ゆめいじり』芳賀篤さんの作品
北見美佳さんの作品『SUMU2〜your story〜』は、絵を鑑賞した来場者に物語をつくってもらう試みを実施
キャンプ場として有名な「ならここの里」。このエリアには6番『SUMU2〜your story〜』北見美佳さんの作品が展示されているとのことで、つり橋を渡って行ってみました。
すぐ側に川が流れ、木々の香りに心が癒されます。
素敵な建物を発見しました。ここが展示場になっているようです。
入り口から見えた特大サイズの絵画、、、!
タイミング良くアーティストの北見さんが滞在されており、お話を伺うことができました。
▲「実はまだこの絵は完成してないんですよね。描いても描いても描き足りなくて……」と語る北見さん
北見さんは沼津に在住のアーティストで、昨年の「原泉アートデイズ!」にも参加しています。
ここで展示されている作品は6枚のキャンバスを合わせて描かれた特大サイズの絵ですが、下半分の3枚は昨年のイベントで描いたものだとか。つまり今年は上の3枚を足して1つの作品に仕上げているのです。おもしろいですね。
そして来場者には絵を実際に見て、そこから物語をつくってもらっているようです。
その理由を北見さんにたずねると「物語をつくり出していただくことによって、ただの絵画鑑賞に留まらず、より想像を膨らませることができると思うんです」とのこと。
素敵な試みですね、、、!
▲特別に制作スペースも拝見。個展に向けて絵を描きためているとのことです
もう1つの受付会場まで約8km。自然豊かな山間でアートを感じつつ、ゆったりとした時間が流れる
アート作品の展示エリアの両端には1つずつ受付会場があります。1つが「旧JA原泉」で、もう1つがそこから約8km先にある「旧田中屋」。どちらから観覧をスタートしてもOKです。
このアート巡りの魅力は、個性的なアーティストによる作品はもちろん、「原泉」というエリアが持つ自然の豊かさを感じられることだと思います。
「日常の生活からちょっと抜け出してデトックスしたい」
そんな方にもおすすめできるアートイベントです。
旧田中屋には9番『するれありすもす』(ケブルジャラ・プロダクションさん)が展示されています。お座敷に上がって鑑賞するスタイルです。
旧田中屋ではグッズだけでなく駄菓子も売っています。ぜひお子さんを連れて訪れてみましょう。
レンタサイクルの貸出もしているので、のんびり山間の風を感じながらのアート巡りも気持ち良さそうですね。
原泉アートプロジェクト代表「羽鳥祐子さん」が原泉にかける想い
受付で「原泉アートデイズ!」を主催する羽鳥祐子さんとお話する機会がありました。
聞けば羽鳥さんはフリーのデザイナーで、たまたまこの原泉で理想的な空き家が見つかったことから掛川に住むようになったとのこと。
原泉でアートイベントを始めようと思ったきっかけは、現代美術家「中瀬千恵子さん」との出会い。千恵子さんと交流を深める中で「地域に根付いたアートプロジェクトをつくりたい」との思いが強まり、「原泉アートプロジェクト」が生まれました。
羽鳥さんいわく、「原泉アートデイズ!」の大きな特徴が「滞在制作」です。
このプロジェクトに参加しているアーティストは、原泉エリアに滞在してアート作品をつくります。早い方だとイベントの何ヶ月も前から現地に入り、制作を始めるのだとか。
原泉はのんびりとした里山で自然に囲まれ、アート制作には良い環境に違いありません。制作や展示には原泉エリアの空き施設が使われており、近年注目されている「空き家対策」としても実に面白い試みではないでしょうか。
「このプロジェクトを通して、原泉というエリアを多様性のある場にしたい」と語る羽鳥さん。お話したのは短い時間でしたが、穏やかな雰囲気の中に真っ直ぐな想いを秘めた、極めて稀有な存在だと感じました。
原泉アートプロジェクトを応援するため、ぜひドネーションを!
この「原泉アートデイズ!」では一般的な観覧料では無く、代わりに「ドネーション(寄付)」という形をとっています。
ドネーションは「投げ銭」などと呼ばれることもあり、見た人が自由に観覧料を決めることのできるシステムです。
欧米の「チップ」文化と近しいもので日本人には馴染みが無いかもしれませんが、気にせず自分の好きな金額をドネーションすればOKです!
ドネーションはリターン付きのものを選ぶこともできるので、好きなリターンに合わせたドネーションもおすすめ。
▲僕はドネーションで千恵子先生の絵を頂きました、、、感激!
会場ではアーティストの作品や原泉オリジナルグッズを購入できる!
受付の会場では、アーティストの作品やグッズを購入できます。オシャレで可愛いアイテムが揃っており、思わず「アレもコレも」となってしまうので注意が必要です(笑)
▲こだわりのグッズがたくさん。ロゴにも深い意味が込められていそう
▲気に入ったアーティストの作品をその場で購入することもできます
▲なんとオリジナルのガチャまで!これは子どもが喜びそう、、、!
取材中、運営を手伝うサポーターの方と話す機会がありましたが、皆さん本当に楽しそうに活動されているのが印象的でした。
聞けばこのアートイベントはほぼ個人的なところからスタートしているとのこと。まだまだ資金的な部分やサポーターも足りていないようです。
アートに関わる人たちが少しでも活動しやすくなるよう、ぜひ皆さんからの温かな応援(ドネーション)をよろしくお願いいたします!
来年は僕もサポーターとして、この素敵なイベントをがっつり支援するつもりです!
サポーターに興味がある方は原泉アートプロジェクトホームページをチェックしてみてくださいね。
原泉アートデイズ!の基本情報
- 開催日:2019年10月24日(木)~11月10日(日) ※火・水曜日は休業
- 開催時間:10時~16時
- 会場(受付&案内所):旧掛川市JA原泉支所(〒436-0334 掛川市原泉地区)
- アクセス:JR掛川駅北口より掛川市営バス「泉」行き乗車で約30分
- 観覧料:自由 ※ドネーション式
- ホームページ:https://haraizumiart.com/